愛猫と別れの日

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先週の金曜日の朝、こたろうが死んでしまった。
9月に入ってから強制給餌を始めて、ずっと落ち続けていた体重が先週やっと下げ止まり、体調が悪化してからずっとダンボールの中で隠れるように寝ていたのが、時々出歩くようになって、これから持ち直してくれるかもと思っていた矢先に。

体調が悪化しているときは、朝一番にこたろうが生きてるか確認して、おはようと言って撫でていたのに、ここ数日元気そうだったので、薬を飲ませる時間まで寝かせておこうと思い、そのままにしていた。
6時頃に子どもに朝ご飯を食べさせて、ちゅーると薬を混ぜながら、今日の段取りを考えてた。
数日前から風邪をひいていたので、こたろうを病院に連れて行くか、自分の病院を先にするかどうしようと思いながら、そろそろこたろうを連れてこようかと思っているときに、いつもより少し早く起きてきたダンナに焦った声で呼ばれた。
廊下でこたろうが苦しそうな顔のまま倒れてて、お腹のあたりはまだ少し温かいのに手足は冷たくてもう硬くなり始めてた。

何の音もしなかった。
こたろうが声も出さずに、ひとりで死んでしまった。
朝起きたときに、こたろうにおはようと言ったはずだけど、ちゃんと思い出せない。
私が起きてきたら、廊下に出てきたような気がする。
抱っこはしていないけど、撫でてやったような気はする。
でも、それもどうだったか思い出せない。
ちゃんと抱っこしたのは、前日の夜、寝る前にこたろうをヒザに乗せてタオルでくるんでエサをあげたときまで。
もう食べたくないよというふうにタオルに顔を隠してしまうのを、何度も引っ張り出して、それでも口を開けてくれないので最後の1粒を諦めて、ちゅーるを口の横から飲ませた。
そのあと、いつもはダンボールで寝てしまうこたろうとなんとなく離れがたくて、そのまま抱き上げて、ダンナと洋ドラを見ている間、並んで座ってこたろうの背中を撫でていた。
寝る前に、いつもしていたように、おやすみと言いながらダンボールの中に隠れているこたろうを撫でた気はする。

あとから思い返せば、その朝はいつもと違った。
朝、洗面台の下のマットにおもらしをしたようなあとがあった。
今までおもらしはしたことがなかったのに。
朝ご飯の用意をしているときに、ダンボールの中で突然びっくりしたような、大きな音がしていた。
そこで様子を見に行けば、また違った結果だったかもしれない。
少なくとも、誰も気づかないうちに死なせることはなかったかもしれない。

そのあと、どうしたっけ・・・。
私が泣き叫んでる間に、ダンナが子どもを送りだして、自分で朝ご飯を用意して、火葬の手配をしてから会社に行った。
私は、こたろうの体をきれいに拭いてやって、火葬場に持っていけるようにこたろうをタオルでくるんで、大きいダンボールに入れて、そのダンボールの前にお水とこたろうが元気だった頃に食べていたエサを置いた。
泣きながらぼうっとしていたら、胃が猛烈に痛くなってきて、文字通り七転八倒。ぜんぜん動けない。
トイレで吐いたあとで、少し動けるようになったので、今のうちに薬をもらってこようと思い、すぐに胃腸の病院に行った。
診察してもらっている間も泣きどおしで、医者に事情を説明すると、あなたはストレスに弱いから落ち着くまで治らないねと言われた。
レントゲンを撮って、胃だけでなく、小腸の方にも空気があるから急性の腸炎かなということで、1ヶ月分の薬をもらった。

家に帰ってから、急に熱が上がってきた。
病院で胃腸の薬と風邪薬を一緒にもらってきたので、全部飲んで寝ようとするけれど、こたろうの最後の表情が目に焼き付いてて、目を閉じても寝られない。
午後から子どもの授業参観があったけれど、とても行ける状態ではないので、ダンナに会社が早退できそうなら代わりに行ってくださいと連絡した。
晩ご飯もダンナにおまかせした。

こたろうは、結婚してから飼った猫で、誰も知り合いがいない土地でのスタートを支えてくれた。
小さい頃はとてもやんちゃで、いたずらをし放題。
子育ては思ったようにはいかないんだよと、子どもが出来る前に教えられているようだった。
そして、今年の連休頃に、実家の母が入院したのとほぼ同時にこたろうの体調は悪化した。
こたろうは去年から腎不全で病院に通うようになっていたけれど、どうも母と同じような血液系の病気になったようだった。
詳しく調べるには骨髄検査をする必要があったけれど、獣医さんから高齢で麻酔を使うし、そこまでするのはどうか・・・みたいな話だったし、母が骨髄検査はしんどいと言っていたので、こたろうにはしないことにした。
こたろうも母も、どちらも完治しない病気で、どこまで延命するかを決めなければいけない。
こたろうに、親を見送る事前学習までさせられているようだ。
つくづくライフイベントの全てに関わる猫だ。

人の場合はどこまで延命するか自分の意志で決められるけれど、ペットの場合はそうじゃない。飼い主が決める。
動物病院のお医者さんも、人間の場合とは違い、こういう治療をしましょう、ではなく、こういう選択肢もありますがどうします?と聞いてくる。
私は、自然にまかせてあまりムリは延命はしたくないと思っていたけれど、強制給餌で持ち直したという人のブログを読んで、せめて体力だけでも戻ればと思い、ギリギリになってから強制給餌をした。
最初はウェットフードをうまく口に入れられなくて諦めかけたけれど、獣医さんだったらうまくやってくれるのかもと思って、一時入院させて代わりに強制給餌してもらったらどうなるのか相談してみた。
入院すると逆に食べなくなっちゃう子もいるので、どちらがいいかなんとも言えない。でもこの方法だったらどうかと言って、カリカリを薬みたいに飲ませる方法を教えてもらった。
私はご飯がこたろうの口にどんどん入っていくのが嬉しくて、せめて1日50粒は食べさせようと思い、3時間置きくらいにこたろうに強制給餌をした。
でも遅すぎた。やるならもっと早く、体力があるうちにやるべきだった。
どれだけ効果があるかわからないのに、こたろうに苦しい思いをさせただけじゃないんだろうか。
エサが喉の奥に入りすぎてオエってしたり、タオルに顔を隠して口を開けるのを嫌がってたのに。

13年間一緒にすごした存在はもういない。
猫はまた飼えるけれど、私をずっと支えてくれた存在の代わりにはならない。
同じ存在は、世の中のどこにもいない。
自分が大事にしている存在が明日もある保証なんてない。
自分が明日どうなってるかだってわからない。
人生は永遠には続かない。